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2007.01.23

コーリーが京浜東北線に閉じ込められたら

ネルソンデミルの「王者のゲーム」白石朗訳 (The Lion's Game by Nelson DeMille)

を読んでいたときに書いた駄文をパソコンの中に発見した。読んでいた作品に大い
に影響された文体と語り口になっている
のが自分でも可笑しい。約5年前である。
ちなみに「王者のゲーム」はアメリカ本土への進入に成功したリビアの暗殺者ハリ
ールを追跡しテロを阻止しようとする連邦捜査官の戦いを描いたお話で、自分とし
ては過去最高の評価の作品である。主人公コーリーは軽口をたたきながらも超有
能な男で、彼の目を通して語られるすべてにユーモアと皮肉があり楽しいことこの
上ない小説であった。ついでに言うとこの作品は2000年11月にアメリカで発刊され
たものゆえ例の2001.9.11より前である。

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今朝の京浜東北線

横浜線の紗那違法そうで、いや社内放送で(二度やってもいっしょのアホな変換、
いや何度やってもいっしょはいっしょか。紗那って一体ナニ?)いや車内放送で
人身事故京浜東北が止まっている事を知り、ひとしきり頭脳を働かせた結果、
京急の仲木戸(こんな地名がスラスラ変換されるのが不思議)から鈍行でゆっ
くり座って出勤しようと決めた。「王者のゲーム」(下)も終盤を迎え、ますます盛
り上がってきたところだし、じっくり読んでやるのも悪くない。

ところが電車が東神奈川駅にとまると、ホームの反対側には奇跡のように京浜
東北の北向きの電車がドアを開けて私を待っているではないか。しかもかなり空
いている。なんだ、京急を使うまでもなかったのね。ラッキー。
喜び勇んで電車に乗り込み進行方向左側の開かないドア横に陣取って、レーガ
ン元大統領の運命の行方に集中した。ここで、ネルソン・デミルの話術JR東日
術中にはまり、自らの運命の行方には一切の疑念を持たなかったのが第一
の敗因だった。

電車は事故の事など知らなかったように、いつにもない猛烈な加速で新子安ま
でぶっとばし、さらに鶴見駅までもう少しと近づいた地点で急に停止した。そして
この地点に延々と3時間ほど、いや実際には20分ほど止まった時点でレーガン
元大統領の無事を確信し、電車が止まっている事に気付いた。これはウソ。隣
のレーンを東海道線だか、横須賀線だかが何本ものぼったり下ったりしたが、
その間わが京浜東北線はピクリとも動かなかった。

しばらくしてゆっくりと動きだし、鶴見駅に止まり、ドアが開いて新鮮な鶴見の空
がどっと流れ込んできて一息ついた。車内には一種安堵の空気が流れたよ
うだった。ま、動き出したからにはなんとかなるだろうと、今度はコーリーとケイト
がハリールの銃撃から逃れられるかに集中した。このままハピーエンドを迎える
のか、それとも悲劇的な結末を迎えるのか、デミルのことだからどっちでもおか
しくはないとはらはらしながらページをめくる。すると電車はちっとも川崎に近づ
いていない事に気がついた。またとまっている。車内では携帯電話で会社に連
絡する話し声が目立ち始めた。時計をみると9時半。お~。これはいかん。

紗那違法そうでは、いや車内放送では東海道線の電車は動いているので線路
には降りてくれる
なとしきりに繰り返しており、どうにかすればドアは勝手に開け
られるものということを白状していた。アホな車掌め。もっと気のきいた事を言わ
ないと銃撃にさらしてやるぞと、そろそろ苛立ってきた。しかし、自分は戦闘車
両にいて、いや先頭車両にいて、車掌はきっと一番後ろの車両の一番後ろに
隠れながら、いきり立った乗客の動向を気にしながら無意味な放送を繰り返し
ているわけだ。ここから8両だか10両の車両をどすどすと行進していって車掌
に銃撃を加えるのは得策ではないと思い返し、こういうわけで車掌は命拾いを
しやがったわけだ。周りにも殺気だった雰囲気は感じられず、車掌は許してや
る事にした。しかし、恐るべき暗殺者ハリールは一生かかってもコーリーとケイ
トを殺すと宣言していたぞ。

そろそろ腰に負担を感じだし、もぞもぞと立ったまま寝返りを打つ。すると、吊り
革に掴まっている隣の男の顔面と正面衝突を起こしそうになったので、あわて
て元の姿勢に戻った。半年前まで居た協力会社の○○○君に似ていたが、彼
ではなかった。するとまた腰が悲鳴をあげそうになったので、腰への負担が一
番小さい姿勢を探すべく、その場でもぞもぞすることにした。頭に血が上り、体
温が上がり、だんだん暑くなってきたのでコートの前を開けた。会社に着くまで
に裸にならなければいいが。

気分が悪くなったり、トイレが我慢出来なくなったりする乗客がでないか、ある
いは怒り出して暴れたりする輩がいないか慎重に車内をチェックしてみたが、
混んでいないせいか、問題は無いようだったので自分も自制することにした。
自分の忍耐力の限界を試すべく、今度は最後になってやっぱり出てきたCIA
の胡散臭いエージェントの話に入って行く。なんと最初から知っていたという
のか。そしてハリールを逃がしてやれと言うのか。う~~ん、コーリーも忍耐
力を試されている。監禁・禁固・虐待・精神的苦痛とそれから無意味な車内
放送での侮辱の五件でJR東日本を訴えてやろうか。あと、腰痛が復活した
らそれもくわえてやる。忍耐力の限界を越えた事をしめすにはどうすれば良
いか考えながら、王者のゲームの最終ページを読み終えたのは、やっとこさ
で蒲田の駅に着いた時であった。ドアが開き蒲田の新鮮な空気が入ってき
たのせいもあって爽やかな読後感。満足感。もし、王者のゲームではなく、
翻訳のひどかった「アトランティスを発見せよ」を読んでいる時だったら、ここ
まで我慢はできなかったに違いない。

腰をさすりさすり会社の席についたのはちょうど1000時であった。いつもよ
り約45分ほど余計にかかったことになる。朝一の30分は午後の3時間に
匹敵するというではないか。一番仕事のはかどる時間帯を盗みやがった罪
もくわえると合計7犯ということになる。これはJR東日本への貸しだ。

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コメント

こんばんは~。

まだ隠してませんか?おもしろい日記・・・(笑)
通勤電車の中でこんなふうに考えている人がいるなんて・・・・
何だか読んでいて楽しくなりました♪

投稿: bikki | 2007.01.26 20:23

bikkiさん、こんばんは。自分がひどく落ち込んだときに肩に暖かい手を当ててくれるようなコメントをいただいたことが忘れられません。自分には今回そのような気のきいた言葉をかけてあげることが出来ませんでした。だから、少しでも微笑んでくれたら嬉しいです。すてきな犬を散歩させている人を見るたびに心がきゅんとなります。悲しい出来事が起きるともう世界は変わってしまいます。でも世の中は何もなかったかのように動いていきます。時間がかかってもやがて悲しみを飲み込み、人は強く優しくなっていくのだと思います。bikkiさん、肩に暖かい手を感じてください。

投稿: はるきょん | 2007.01.27 21:26

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