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2009.12.12

神経鞘腫手術記その1

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右手首の親指根本側に小さなできも出来ているのに気づいたのは一年ぐらい前だろうか。自分が普段気にしているのは顎に出来たアテローマの方なので、あまり気にしなかったのだが、知らないうちに徐々に大きくなり今ではBB弾ぐらいになった。ランニング中、左手にはセイコーパルスグラフ(心拍計)をしているので、額の汗をぬぐうのは右手の袖になる。そのときちょうど当たり、ピリッとした痛みが走るのである。激痛ではないがいや~な痛みである。いろいろと調べてガングリオン(結節腫)かなぁと思い、整形外科にかかると、最初レントゲン、次になんとMRIを勧められた。費用が高い(3000点つまり9000円)のでちと悩んだが一応受けてみた。手首を撮影するだけなのに頭から全身をMRIに入れられちょっと大げさな感じがした。MRIでは造影剤とやらの注入のため左手に注射をされた。放射線科の看護婦は上手で痛みもほとんど無くやってくれた。次の週、検査結果を聞きにいくと神経鞘腫しんけいしょうしゅ、シュワノーマ)という診断が下された。なんだそれは?ガングリオンではなかったのか。この腫瘍は塗り薬も飲み薬も効かず、小さくなることはないので手術で取り去る以外に方法がないという。あたったときに感じる電気ショックのような痛みはチネル徴候といって神経鞘腫に独特の痛みだそうだ。たぶん悪性の腫瘍でない可能性が高いので多少の痛みを我慢できれば日常生活に不便はないので放っておいてもかまわないと。どうします?

ひとしきり悩んだが、邪魔な物は邪魔なので手術で切除して貰うことにした。三通りの手術があるという。全身麻酔右腕全体の麻酔、それから局部麻酔。全身麻酔だと入院、局部麻酔なら日帰りになるという。ちょっと考えて局部麻酔でお願いすることにした。これが我が人生初めての手術になるわけだ。座ったままやるのだろうか。切開するところが目に入るのだろうか。それは見たくないなぁなどと考えていた。旧東海道ランの計画や忘年会など考慮して日程を決めた。

手術の前の週に血液検査を行った。人間ドックの時と同じで、VVRで気分が悪くなることがあるのでと懇願すると、処置室のベッドに寝かされて採血してもらった。整形外科外来の看護婦もとても慎重にやってくれ、上手でほっとした。

手術当日(12月7日)

当初、1400時から開始するため1330時までに整形外科外来に来るようにという約束だったのだが、2日前にケータイに電話があり、事情により1時間後ろにずらしてほしいということになった。我が神経鞘腫は一分一秒を争う病気ではないため快く承諾してさしあげた。当日は、どうせ長い待ち時間があるのだろうという読みから昼休みに近くの書店で暇つぶしの文庫本をテキトーに選び「あ・じゃぱん!」上巻を持って行った。どういうわけか昼食は抜きでという指示だったのでもちろん従った。

整形外科の受け付け前は午前中と同様に混んでいた。午後は新患のみというのにこれや如何に。受付を済ませると手術着に着替えた。人間ドックの時と同じような軽い寝間着である。血圧体温測定をする。血圧はいつもよりもちょっと高い。事前に署名してきた書類を渡すと、他にもいろいろと質問された。過去アレルギーの経験は?今飲んでいる薬はありますか?今、治療中の病気はありますか?大きな病気の経験は?輸血の経験は?昼食をとりましたか?朝食は何時?最後に水分をとったのは何時頃?ご自宅は横浜ですね。何分ぐらいかかりますか?会社はこの近くですか?などなど個人情報のやりとり(一方的な提供だが)をするたびにだんだん看護婦さんとお近づきになっていくような気がした(笑)。ついでだから、もっと聞いてくれれば何でも答えようという気になってきたが、設問項目はその辺で尽きたようだった。ひと通り答えた後は待ちに入った。待合室では依然として一般の外来患者がプアなソファーで辛抱強く待っている。その中にひとり手術着を着て混じると違和感が大。ただ自分はこれから手術するんだもんねというような不思議な優越感のようなものを少しだけ感じた(笑)。この時点ではまだ多少心に余裕があった。貧弱なパイプいすに腰掛けてあじゃぱんを読む。

狭い通路を圧して大きな可動式ベッドが横を通りかかりエレベーターに乗っていずこかへと移動してゆく。患者は土のような顔色のがりがりに痩せた男で死んだように眠っていた。ぎょっとし、まさか霊安室行きではないか?い、いや点滴をしているのでまだ生きているということだよな、などと考える。ふー。

だんだん妙な緊張感が高まってくる。看護婦が来てしゃがみ、大変申し訳ありませんが手術室が空かないので30分待ってくれと言う。またまた自分の神経鞘腫は一分一秒を争わないのでぜんぜんかまいませんと余裕のあるところを見せておいて、あじゃぱんに集中する。日本が戦後、分断国家になっていたら...という半分冗談のようなおもしろ本である。持ってきてよかった。

正確に30分経つと、再び看護婦がやってきてトイレに行くよう指示される。ハイハイ、待ってました。おっしゃるとうり何でもいたします。最後の一滴まで振り絞り(笑)膀胱をすっかり空にした。先ほどのベッドが乗っていったどこへ通じるとも知れぬエレベーターに初めて乗り、3階だか4階にあがった。看護婦二人に連れられ手術室に入れられた。二重扉の間の空間には別の看護婦のペアがいて書類を見ながら本人確認をした。名前・生年月日などを間違えないように慎重に答えると、ありがたく認証が通ったらしく、新しい庇護者に無事引き渡された。ただ、彼女はキャップをかぶり大きなマスクをしているので目元だけしか見えずどんな美人かは確認できなかった。名前をフェルトペンで書いた(なぜかひらがなだった)輪っかを左手首にはめられ、ふわふわした薄いキャップのような物を頭にかぶせられた。昔のパーマ屋みたいだなと思った。そして頑丈な二重扉の内側扉を通り抜けた。

手術室は思った通りの造りで天井から巨大な6眼ライトとやや小さめのライトが並んで光り、中央に高いベッドがあり、すでに点滴がぶら下がっていた。ベッドの右側には小さめの延長ベッドのような作業台が取り付けられていた。部屋の周りには様々な機器がならんでいた。座って手術するかもという何の根拠もない淡い期待ががらがらと壊れ去った。本格的な手術なんだ。整形外科のH先生をはじめ何人ものスタッフがなにやら忙しく動き準備をしていた。この時点で気の弱い自分はもう帰りたくなっていた。逃げ出したらいったいどういうことになるだろうか。小学生の上履きのような運動靴を履いた看護婦が追いかけてくるのだろうか。しかし土地感なしでペラペラのスリッパにこの格好ではさすがのサブ4ランナーでも逃げきれないだろうな。

促されてしぶしぶ二段の段差を上ってベッドに横たわり、しばし右の尻と左の尻と肩と両肘でもぞもぞして体勢を落ち着かせた。すると突然あちこちから手が伸びてきて、同時に一度にいろんな声がして瞬く間に我が肉体は手術システムにマウントされていった。足首に○○をしまーす。よく聞き取れなかったが、あ、ハイ。左手の指先に赤血球をはかるセンサーをつけます。はぁ?パルスグラフのようなものだろうか。そんなもんで赤血球が計測できるのかと思ったが、ハイ。指サックのようなもので別にチクッともしなかった。胸に心電図のなんとか(聞き取れず)をつけます。冷たいですよ。あ、ハイ。手術着の胸を微妙にはだけられて吸盤型のセンサーがぺとぺとといくつか取り付けられた。これは人間ドックと同じだから平気だ。足元に毛布を掛けます。暑かったり寒かったりしたら言ってください。ハイ。そうします。左手に点滴を打ちますので肘を伸ばしてください。嫌です!と言いたかったがハイと答えた。でも嫌だぁ。右手を消毒します。ちょっと冷たくてぬるぬるしますよ。嫌ですと言いたかったがハイと答えた。お顔の前に仕切りを置きます。あ、ハイ。右腕が持ち上げられ冷たくてぬるっとしたものが塗られる感触がした。ひえー。刷毛のような物で塗られている。肘から指先まで裏表を満遍なく。あー気持ち悪い。顔の前に毛布が掛けられ右手側は見えないようにされた。ちょっと見たい気もするが、自分の肉体が切り開かれている場面を見たら確実に失神してしまい、後生悪夢にうなされることになるはずなので、容認することにした。左腕は看護婦が肘の内側をペしペしして血管を探している。あー、この瞬間が一番嫌だ

看護婦二人でここかなぁ、こっちがいいんじゃない?とか指さしながら、結局左手の手首近くが選択されたようだ。自分がモノになったような気がした。ちょっとチクッとしますよ。(しぶしぶ)ハイ。思わず左半身をぎゅっと緊張させて身構える。チクッ。すーっと大きく息を吸いながら耐える。なんでもない、なんでもない。左足首に巻かれたベルトか何かが突然膨らみはじめぎゅーっと圧迫される。な、なんだこれは?あ、足首が痛いんですけど。あ、それ血圧計で5分毎にふくらんで計測するだけですから安心してください。ハー血圧計でしたか。左手首は針を刺したあと周りをテープやなんかで固定しているようだ。が、依然痛い。看護婦さんが痛くないですかぁ?と聞くので、それでは正直に、いや、ちょっと痛いんですけどぉと答えたら、看護婦の手がハタととまり、ちょっと慌てたようすで今貼ったばかりのテープをばりばりとはがし始め、針まで抜いてしまった。あ~、なんということを。やり直すのか。それは止めてくれ~。肘の内側をふたたびぺしペしされて、ご免なさいね、もう一度チクッとします。怒っていたのでハイと答えなかった。チクッ!大きく息を吸い込んでまた耐える。足首の血圧計がヒューとしぼみ、圧迫されていた足首が楽になる。痛くないですか?痛かったが、何度も針を刺されるのは御免こうむりたいので、ハイ大丈夫ですとウソをついた。やせ我慢というのだな。いや大人の会話とでも言おうか。看護婦二人はほっとしたようで、針をテープなどで固定し、点滴を落とし始めた。これで看護婦の当面の作業が終わったらしく自分の視界(左側だけ)から人がいなくなった。最初から大丈夫ですと答えておけばよかったぁと後悔した。いや、手術することにしたこと自体から後悔していた。右側の見えないところから、緊張してますか?と先生が登場。ハイ。もう後悔してます。いやどきどきしてます。とこれには正直に答えた。じゃぁ音楽でもかけましょうかねぇ。えっ?音楽ですか。するとどこからとも無くミュージックステーション(笑)で聞くような音楽が流れてきた。それでは始めましょうか。手術室にステレオの設備がおいてあったことまでは気づかなかった。どこかで聞いたことのあるような曲だった。この選曲は手術室の主であろう看護婦の趣味なのだろうか。いやそれとも有線かなぁ。鼻の穴尿道その他にはチューブを差し込まれずに済んだらしいことに気づきほっと胸をなで下ろした。こうして準備が済み、手術が始まった。(その2に続く) 

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